2026年9月30日訂正:初版には、事務所での対応の頻度や値上げの方向性を、根拠を示さず説明した箇所がありました。それらを削除し、契約と作業記録を使った検討手順に改めました。誤りがあれば責任が一律に士業側へ帰着するという説明も撤回しました。
顧問料の見直しを顧問先から相談されたら、まず現在の契約で何を引き受けているかを確認します。業務の一部にAIを使う場合も、下書きや集計にかかる時間だけで価格を決めず、入力の準備、内容の確認、修正、顧問先への説明までを並べてみましょう。
この記事では、士業事務所の所長や契約を担当する方に向けて、顧問料と提供範囲を検討するための表を用意しました。料金相場や値下げ率を示すものではありません。表と説明文は設計例であり、実在する事務所の実績や士業AIの料金メニューではありません。
顧問料に含めている業務を書き出す
契約書と直近の作業記録を見ながら、定型作業、専門判断、継続支援を分けて記入する方法があります。この分け方は本記事の検討用で、業務の価値や料金を一律に区分する基準ではありません。
| 記入する区分 | 対象業務の例 | 現在の契約で確認すること | AIを使う場合に追記すること |
|---|---|---|---|
| 定型作業 | 入力、集計、資料の下書き | 件数、対象資料、納期、含まれる修正 | 使う工程、準備と確認の担当、使わない資料 |
| 専門判断 | 個別事情の確認、税務・労務・法務の検討 | 誰が何を判断し、どの成果物を提出するか | 回答と原資料の照合、採用を決める人、判断を保留する条件 |
| 継続支援 | 面談、相談、関係者との連絡 | 頻度、対応時間、連絡方法、範囲外の依頼 | 変更する支援、追加の対応時間、顧問先に確認すること |
契約書に含む業務と、実際に引き受けている業務が違う場合は、差がある項目を残します。所内で予定している変更と、顧問先と合意した変更も別の欄で管理しましょう。
下書き時間と、確認・修正の時間を分けて比べる
比較する際は、対象業務、処理件数、資料の状態、完成とする条件を揃えます。条件が揃わない記録は、その違いも併記します。担当者の作業時間と、顧問先からの返答を待つ時間を分けると、工数と納期のどちらを検討しているかが明確になります。
以下は、比較表の書き方を示す架空の数値です。短縮効果の予測や導入実績ではありません。
| 同じ対象業務で記録する工程 | 使用前の例 | 使用後の例 |
|---|---|---|
| 資料の準備・入力(仮想例) | 20分 | 30分 |
| 下書き・集計(仮想例) | 50分 | 20分 |
| 原資料との照合・修正(仮想例) | 20分 | 35分 |
| 説明・納品(仮想例) | 10分 | 10分 |
| 担当者の作業時間の合計 | 100分 | 95分 |
この例では、下書き・集計は30分短くなっていますが、準備と確認が増え、合計の差は5分です。自所で比較する際も、短くなった工程だけを取り出さず、やり直しや追加確認を含めて記録します。
時間と併せて、誤りの修正件数、差し戻し、納期、顧問先が受け取る成果物も確認しましょう。利用料や初期設定、所内で使い方を確認する時間は、毎月の処理時間と別に記録します。単発の比較だけで継続的な削減率を約束せず、通常業務と例外対応の両方を見てから料金案を検討する方法があります。
業務の記録項目を決める際は、AI利用ログの残し方も参照できます。工数の計測用に、顧問先の機密情報や会話全文まで複製する運用にはしません。
据え置き・範囲変更・追加支援を比較する
工数と提供内容が分かったら、料金案ごとに顧問先が受け取る内容を書きます。下表は検討の選択肢であり、いずれかの価格方針を推奨するものではありません。
| 検討する案 | 顧問先と確認する内容 | 所内で確認する条件 |
|---|---|---|
| 金額と範囲を維持する | 成果物、納期、面談等の範囲を維持すること | 確認・修正と利用料を含めた費用、提供を続けられる体制 |
| 金額を維持して内容を変える | 追加する支援と、減らす・置き換える業務 | 空いた時間を実際に割り当てられるか、担当者と対応上限 |
| 金額と範囲を減らす | 対象から外す業務、別料金になる依頼 | 依頼が範囲を超えた際の確認・見積もりの手順 |
| 追加支援を別料金にする | 追加の成果物、期間、対応範囲、費用 | 既存契約との重複、自所で担う範囲、他の専門家への引継ぎ |
金額を据え置く理由を作るために、顧問先が必要としていない支援を加える必要はありません。面談やレポートを増やす案なら、まず利用したいかを確認し、誰がどの頻度で提供するかまで記入します。
新たにAI支援を受託する場合は、既存の顧問業務の変更とは別に、サービスメニューと契約範囲を検討する記事で扱う論点も確認してください。本記事は既存顧問料の説明と見直しを対象にしています。
顧問先には、変わる内容と変わらない内容を説明する
説明資料には、現在の業務、変更案、料金、適用を相談する時期、範囲外の依頼への対応を並べます。AIを使うこと自体を値上げや値下げの理由にするのではなく、契約と作業記録を示して話せる形にします。
次は書き換えて使う説明文の例です。角括弧の箇所には、実際に確認・合意できる内容を入れます。
今回見直したいのは、[対象業務]の提供範囲と料金です。[対象期間・件数]について、資料の準備、作成、確認、説明の時間を記録しました。変更案では[変える内容]を変更し、[維持する内容]は引き続き提供します。料金は[提案額と対象範囲]、適用時期は[協議する日付]を案としてご相談します。範囲外のご依頼は[確認と見積もりの方法]で扱います。
工数をまだ計測していない場合は、短縮率を入れず、何をどの条件で確認するかを説明します。顧問先に渡す資料には、提示した案と合意した内容を区別して残しましょう。
顧問先情報の扱いと、成果物の確認も決めておく
個人情報保護委員会の注意喚起は、個人情報を生成AIへ入力する際、特定された利用目的の達成に必要な範囲かを確認するよう示しています。また、本人同意なく個人データを入力する場合について、応答以外の目的での取扱いに注意し、機械学習への利用等を確認するよう述べています。1
料金の説明に添える利用範囲は、実際の契約や設定と照合します。「法人向けだから入力できる」「学習に使われないから安全」と一括りにせず、入力する情報、利用目的、契約上の守秘義務、保存、閲覧権限を確認する手順にしましょう。条件を確認できていない資料は、入力対象から外して検討します。
成果物についても、内容を確認する人、納品を承認する人、訂正の連絡をする人を決めます。法的責任を本記事で一律に判定せず、個別の契約・法令・行為を確認します。納品前の役割分担はAI出力の確認と責任を扱う記事で詳しく扱っています。
顧問料の見直しで迷う点
作業時間が減ったら、同じ割合で顧問料を下げますか
時間の短縮率をそのまま料金へ掛ける前に、契約上の業務範囲と、確認・修正・継続支援を含めた記録を確認しましょう。値下げ、据え置き、内容変更のどれを提案するかは、提供内容と費用を比較し、顧問先と協議します。
他の事務所より高いと言われたら、何を比べますか
比較先の内容を推測せず、顧問先が確認できる範囲で、対象件数、成果物、相談の範囲、納期、追加料金を揃えて見ます。自所の説明資料にも同じ項目を記入し、分からない項目を価格差の理由として断定しないようにします。
まだ工数が分からない段階でも、説明できますか
現在の契約範囲、AIを使う予定の工程、確認する担当者、比較する期間と条件を説明する方法があります。削減額や短縮率は推測で約束せず、記録を確認した後に料金案を相談します。
Footnotes
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個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)、(1)個人情報取扱事業者における注意点。2026年9月30日確認。個別事案の適法性を判定するものではありません。 ↩