AIを使った業務を後から確かめられるようにするには、誰が、どの資料を使い、出力のどこを確認し、何に採用したかを記録します。会話全文の保存を一律のルールにする前に、必要な記録と閲覧範囲を業務ごとに決めてみてください。
この記事では、税理士・社労士・弁護士事務所が所内ルールを作るための記録例を示します。法令上の保存義務を網羅した表ではなく、記録する内容と管理方法を決めるための提案です。
AI利用ログには何を残す?
まず、ひとつの業務で下の表を試し、後任者や確認担当が元資料と判断の経緯をたどれるかを確認します。
| 記録項目 | 記入する内容の例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 利用者と日時 | 利用者の所内ID、作業日時 | 誰に経緯を確認するか |
| 対象業務 | 月次報告の下書き、所内資料の検索など | AIを何のために使ったか |
| 製品と利用条件 | サービス名、契約プラン、確認した設定 | どの条件で使ったか |
| 参照資料 | 承認された保管先の参照番号と版 | 何を根拠にしたか |
| 出力の扱い | 下書きとして保存、修正して採用、見送り | 出力を何に使ったか |
| 人の確認 | 確認者、照合した箇所、修正内容 | 何を確かめて採用したか |
| 追加で確認すること | 残った疑問、確認担当、対応状況 | 次に何を確認するか |
これは記録様式の設計例です。顧問先名や本文を毎回転記する前に、権限を設定した元資料の参照番号で足りるかを検討します。パスワードや認証キーは記入欄に含めないでください。
利用者を区別する準備には、ChatGPTのアカウント共有と個別IDへの移行も参照できます。
会話全文と管理者ログは、同じものとして扱える?
確認表では、利用者が画面で見る会話履歴、管理者が取得できるイベント、所内で残す業務上の確認記録を分けてください。必要な情報がどこにあるか、誰が取得できるかを試用時に確かめます。
たとえばOpenAIの公式資料では、Compliance Platformの対象をChatGPT EnterpriseとEduのワークスペースとしています。ログやメタデータへのアクセスを提供する仕組みで、必要な権限を持つ管理用キーの作成が案内されています。この説明を、すべての有料プランに同じ機能があるという意味では使わないでください。OpenAI Compliance Platform
製品のログだけで、担当者が原資料と照合した内容まで記録できるかは、実際の業務で確認します。足りない項目は既存の案件管理や確認票で補い、取得できない情報を「取得済み」と記録しないようにします。
どこに保存し、誰が見られるようにする?
記録の保管先、閲覧者、変更できる担当者を決めます。会話や添付に顧問先情報が含まれる場合は、ログを共有するときも、その情報の取扱条件に沿って閲覧範囲を確認してください。
全文が必要な業務では、対象と目的を指定して保存します。参照番号と確認結果で足りる業務では、同じ内容の複製を増やさない設計を検討してください。個人端末への書き出しや、全職員が見られる共有表への貼り付けを標準の手順にしないことを勧めます。
保存期間は何を基準に決める?
AI利用ログ全体に、帳簿や労務書類の保存年数をそのまま当てはめる運用は避けてください。まず保存対象を、原資料、提出・納品した成果物、業務上の確認記録、サービスの会話履歴に分けます。そのうえで、適用される法令、契約、所属団体の規程、所内の目的を責任者が確認する手順にします。
保管表には、記録の種類、保存目的、根拠、保存先、閲覧者、見直す時期、削除担当を記入します。事故調査などで保全が必要になった場合の扱いも、通常の削除手順と分けて決めてください。具体的な年数の確定は、対象文書と業務を確認して行います。
記録を残した後は、何を確かめる?
架空の資料を使った試用で、確認担当に記録を渡し、元資料、採用した出力、修正理由へたどれるかを試します。閲覧権限のない担当者が記録を開けないかも確認し、不足があれば項目と権限を見直してください。
ログの確認は、AIを使ったことの記録だけで終わらせず、出力を採用する前の照合と結び付けます。取得範囲や保管条件の質問にはAI導入のセキュリティチェックリスト、所内ルール全体の確認には顧問先情報をAIに入力する前の確認手順を使えます。