税理士事務所のニュースレターにAIを使うなら、先に「誰に何を伝えるか」と参照する資料を決め、下書き・内容確認・配信を分けて試す方法があります。 最初は顧問先固有の情報を含まない素材で作り、事務所が内容と送信先を確認した原稿だけを配信します。
この記事では、ニュースレターや事務所通信を作るための指示例と確認表を提案します。特定事務所の時間削減や継続率を測定した事例ではありません。既存のAIで下書きを試す段階と、配信まで自動化する段階は分けて判断してください。
今月、誰に何を伝えるか?
記事の数を決める前に、読み手にしてほしい行動を一つ書きます。「制度の変更点を確認する」「必要な資料を準備する」など、読み終えた後の判断が分かるテーマにします。
企画時には、次の項目を埋めてください。これは本稿で提案する記入表です。
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 読み手 | 経営者、経理担当者など、今回の説明の対象 |
| 読後の行動 | 確認・準備・問い合わせなど、してほしいこと |
| テーマの問い | 読み手が何に迷うかを一文で記す |
| 参照資料 | 発行元、資料名、URL、対象のページや項目 |
| 適用する時点 | 公表日、施行日、対象年度、経過措置の確認結果 |
| 確認担当 | 誰が原資料と照合し、掲載の判断をするか |
掲載する制度や数値は、AIが示した情報だけで決めず、担当者が原資料を開いて確認します。公表日と施行日、現在の案内と過去年度の説明を分け、判断できない条件は原稿に補わせないでください。
AIへ何を渡し、どう下書きを頼むか?
入力前に、使うサービスと資料が所内の利用ルールに合うかを確認します。最初の試用では、利用条件を確認した公開資料と、自分で作った一般的な説明メモを使う方法を勧めます。顧問先のメール本文、決算書、配信リストを、そのまま原稿の素材にしない進め方です。
個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトについて利用目的に必要な範囲内かを確認し、本人の同意なく個人データを入力する場面では機械学習への利用等も十分に確認するよう注意喚起しています。サービスの契約・設定と入力する情報を組み合わせて判断してください。個人情報保護委員会の注意喚起
以下は、公開資料を基に下書きを試すための指示例です。角括弧の項目を自分で埋め、入力してよい資料だけを添えてください。URLを渡しただけで本文を読めたとはみなさず、参照できなかった資料は確認待ちにします。
税理士事務所のニュースレターの下書きを作ってください。 読み手は[対象]、答える問いは[問い]、読後にしてほしいことは[行動]です。 根拠は[資料名・発行元・該当箇所]です。添えた資料で確認できる範囲だけを使ってください。 「要点」「対象・条件」「読み手が確認すること」「出典」の順に書いてください。 日付・金額・適用条件を推測で埋めず、不足は「確認待ち」として本文とは別に列挙してください。 資料の説明と、事務所の提案として追記すべき箇所を分けてください。送信や公開は行わないでください。
指示どおりに出力される保証はありません。下書きの各説明が、指定した資料のどこに対応するかを確認するための出発点として使います。
下書きのどこを人が確認するか?
文章の読みやすさと、内容が正しいことを別に確認します。本稿では、次の確認表を使うことを提案します。
| 確認対象 | 原稿と照合するもの |
|---|---|
| 日付・年度 | 公表日、施行日、対象期間を取り違えていないか |
| 対象・例外 | 読み手に適用される条件や経過措置を落としていないか |
| 数値 | 単位、対象期間、母数、原資料の表や注記 |
| 引用・出典 | 記述を支える箇所と、引用する範囲・利用条件 |
| 事務所の説明 | 原資料の説明と独自の提案を分けているか |
| 固有情報 | 顧問先名、個人名、未公表案件、実際のメール等の混入 |
| 読後の行動 | 必要な準備と連絡先が分かり、実施範囲が決まっていない約束をしていないか |
出典URLを付けただけで、他の記事や画像を自由に使えるとは判断しないでください。文化庁のチェックリスト&ガイダンスでは、AI生成物の利用時に既存著作物との類似性等を確認する取組が示されています。他媒体の記事を丸ごと書き換える指示は避け、利用できる素材、引用範囲、画像やサービスの利用条件を個別に確認する進め方を勧めます。文化庁のチェックリスト&ガイダンス
個別の顧問先の状況で答えが変わる内容は、全員向けの本文で一律に結論を出さず、確認が必要な条件を明記するか、個別対応へ分けます。確認できない論点は、配信を急ぐために削り落とさず、その項目の掲載を見送る判断も残してください。
外国語版は、どこまでAIに任せるか?
外国語版を作る場合は、日本語の内容を確認してから翻訳の下書きを作る順序を勧めます。制度名、金額、日付、対象条件、連絡先を原稿と照合し、その言語を確認できる担当者が読んでください。
再翻訳して日本語が似ていることだけで合格にせず、読み手にとって必要な条件が伝わるかも確認します。確認者を用意できない場合は、外国語版を自動配信する範囲に含めない選択肢があります。
誰が承認し、どの原稿を配信するか?
まず、いま使っている配信方法で続けられるかを確認します。下書きをAIで作るためだけに、新しい配信サービスや自動送信の権限を追加する必要はありません。
本稿で提案する配信前の手順は次のとおりです。
- 確認担当が、確認表の残件と掲載する内容を確定する。
- 確定原稿の版を固定し、送信担当・送信先リスト・配信日時を照合する。
- 所内の確認用宛先へテストし、件名、本文、添付、リンク、宛先の見え方、配信停止の案内を点検する。
- 所内で定めた承認後に配信し、送った版と実施者・日時・結果を残す。
テストの後に本文や送信先を変えた場合は、変更箇所を再確認します。配信停止の希望やリストの更新を反映し、利用目的・配信条件に応じて必要な手続も別途確認してください。原稿の品質確認だけで送信の条件が整ったとは扱いません。
翌号に向けて、何を記録して見直すか?
毎号、企画・下書き・確認・修正・配信に使った時間、修正した箇所、受け取った質問を記録する方法があります。AIの生成時間だけを比べず、原資料の照合や差し戻しを含めた作業全体で、続ける方法を判断してください。
問い合わせが来た場合は、どの説明が不足していたか、次号で取り上げる問いがあるかを確認します。反応がなかった場合も、需要がないと即断せず、届いたか、対象が合っていたか、読後の行動が分かったかを切り分けます。開封・クリック等の数値だけで、内容の理解や信頼の増加を断定しないでください。
AIを試す業務の選び方は税理士事務所のAI活用、入力情報の判断は顧問先情報をAIに入力する前の確認手順も参照できます。利用中の仕組みで不足する工程が明らかになってから、追加の自動化や外部支援を検討する順序を勧めます。