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2026 / 05 / 16 更新 2026 / 09 / 30 セキュリティ

司法書士業務と本人確認・権限管理

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司法書士がAIで書類整理や説明文を試す際の本人確認・情報管理を解説。2024年施行の犯収法改正、登記識別情報の位置づけ、入力前の確認とアクセス権限の設計例を紹介します。

司法書士事務所で、必要書類の案内や依頼人への説明文にAIを使うなら、下書きを作る工程と、本人・意思・申請内容を確認する工程を分けて設計したいところです。この記事では、確認制度の位置づけを一次資料で押さえたうえで、実際の依頼人情報を使わずに試す運用案を示します。

個別案件の確認方法や適法性を判定する記事ではありません。適用する法令・会則・所属会の指針は、案件に応じて確認してください。

犯収法の取引時確認は、どの改正を指すのか

警察庁は、2024年(令和6年)4月1日施行の改正により、司法書士を含む4士業の一部取引で、取引時の確認事項が追加されたと案内しています。「2026年に施行される予定」という説明は誤りです。警察庁の改正案内

警察庁等のリーフレットでは、対象取引として、宅地・建物の売買や会社設立などの行為を代理・代行する契約が示されています。個人の職業、法人の事業内容・実質的支配者など、確認する項目は相手や取引によって異なります。司法書士のすべての業務を、一律に同じ確認事項で扱う説明にはしないようにしましょう。取引・確認事項の詳細(PDF)

同じ改正案内にある「疑わしい取引の届出義務」の追加対象は、行政書士・公認会計士・税理士です。司法書士への取引時確認事項の追加と混同しないことが必要です。

登記識別情報は、登記手続の本人確認手段

日本司法書士会連合会は、登記識別情報を、登記手続固有の本人確認手段と説明しています。不動産と登記名義人ごとに定められる12桁の符号です。旧稿の「所有権を裏付ける情報」という説明を、この制度上の位置づけに訂正します。日司連「権利証」の説明

同連合会は、登記識別情報を紛失した場合でも、登記官による事前通知や資格者代理人による本人確認情報の提供という制度で登記手続が可能と説明しています。犯収法の取引時確認と、登記手続の本人確認制度は、それぞれの要件を確認する必要があります。

この記事では、書類案内や説明文を作る試用に、登記識別情報そのものを入力しない運用を提案します。必要書類が揃っているかを管理する場合も、符号を転記せず、「受領状況」「保管先」「確認担当」を扱う設計から検討できます。

AIの下書きと、担当者の確認を分ける

以下は導入効果を実測した事例ではなく、試用のための設計例です。架空の依頼人・物件を使い、AIが作った文章を採用する前に、担当者が原資料や事務所の手順と照合する流れを想定しています。

試す工程AIに渡す情報の例採用前に担当者が確かめること
必要書類の案内手続の種類と、事務所で確認済みの書類リスト案件に必要な書類が漏れていないか
依頼人への説明文個人を特定しない架空の条件と説明したい事項原資料にない条件や約束を加えていないか
進捗連絡の文案確認済みの工程名と次の予定確認を終えていない手続を完了扱いにしていないか
内部チェックリスト事務所で採用済みの手順確認担当と記録先が抜けていないか

この表は、本人確認をAIで代行する許可や、特定のツールの適法性・精度を保証するものではありません。AIの出力を本人確認や意思確認の完了記録として扱わず、必要な確認を実施した記録を別に残す設計にします。

対面・オンラインのどちらかだけで適否を決めるのではなく、その手続に適用される確認方法を先に確かめてください。ここでは、オンラインでの確認を一律に否定したり、紙の質感を見ることをすべての案件の義務としたりする説明はしません。

個人情報を入力する前に、利用目的と取扱条件を確認する

個人情報保護委員会の注意喚起では、個人情報を生成AIに入力する際、その利用目的を達成するために必要な範囲かを確認するよう求めています。また、本人の同意なく個人データを入力し、応答の出力以外の目的で扱われる場合には、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。個人情報保護委員会の注意喚起(PDF)

「有料プランだから入力してよい」「学習に使わない設定ならすべて解決する」と判断せず、入力する情報と、利用規約・プライバシーポリシー・契約条件を照合しましょう。具体的には、次の項目を事務所の利用判断に含める案が考えられます。

  • その作業に実際の氏名・住所・書類画像が必要か。架空の情報や空欄で試せないか
  • 入力情報が学習やほかの目的に使われるか
  • 入出力の保存期間、削除方法、閲覧できる人を確認できるか
  • 依頼人の情報を扱う権限と、事務所内の利用ルールに沿っているか

同委員会は、生成AIの出力に不正確な内容が含まれ得ることも示しています。書類の読み取り結果や説明文は、整った文章になっていることだけで採用せず、元の資料に戻って確認する運用にします。

アクセス権限と記録は、現在の手順に組み込む

運用案として、書類の保管先、閲覧・編集を許可する担当、確認を完了できる担当を決め、既存の案件管理や保管手順に組み込みます。AIの利用履歴と、法令等に基づく確認記録は、目的と保存要件を分けて管理してください。

たとえば、下書きを作った職員が「確認済み」まで一度に変更する設計ではなく、確認担当が原資料と照合してから状態を更新する流れを検討します。担当変更や退職時の権限見直しも、既存のアカウント管理手順に含める形が考えられます。

まずは個人情報を使わない説明文で試し、担当者の修正箇所と確認の負担を比較してください。AIの利用範囲を広げる判断は、その結果を見てから行うことを提案します。

訂正と参考資料

今回の改訂では、犯収法改正の施行年を2026年から2024年に訂正しました。登記識別情報の説明も見直し、架空の被害事例、根拠のない時間短縮、工程ごとの一律なAI代行可否の断定を削除しています。

Author · 著者

三方 浩允