2026年9月1日訂正: 初版には、士業事務所の導入傾向、導入後に起きた問題、規模別の推奨プランについて、裏付けのない記述がありました。また、保持期間やEnterprise機能を固定仕様のように扱っていました。これらを撤回し、Anthropicの現行公式情報で確認できる事実と、契約前の確認手順へ改めました。
Claude TeamとEnterpriseを比べる際は、SSOの有無だけで決めず、所員のアカウント管理、監査記録、保存期間の設定まで確認しましょう。 2026年9月30日の公式比較表では、TeamにもSSOが掲載されています。1 扱う情報と必要な運用を先に決め、その条件を候補プランが満たすかを確認します。
特に次の四つは別々の論点です。
- 入力・出力がモデル学習に使われるか
- チャットやAPIデータがいつまで保存されるか
- SSO、JIT、SCIMでどこまでアカウント管理できるか
- 長文、共有プロジェクト、コード実行・リポジトリ連携で何が外部へ渡るか
TeamとEnterpriseは、何が違うか?
次は2026年9月30日に確認した公式比較表の抜粋です。機能名が掲載されていることと、自所の設定で必要な操作ができることは分けて確認してください。1
| 確認する機能 | Team | Enterprise | 所内で確認すること |
|---|---|---|---|
| SSO | あり | あり | 利用中の認証基盤でログインと停止をどう扱うか |
| SCIM | なし | あり | 入社・異動・退職に伴うアカウント管理をどう連携するか |
| 監査ログ・Compliance API | なし | あり | 必要な操作記録を、誰が取得・確認するか |
| カスタムデータ保持設定 | なし | あり | 設定対象のデータ、保存期間、例外を確認する |
Enterpriseの比較はself-serveとsales-assistedの両区分を対象にしています。この表だけでAPIの契約条件や、連携先サービスのデータ処理まで同じだとは扱わないでください。1
契約費用は、何を確認するか?
公式料金ページは、Enterpriseにself-serveとsales-assistedを案内し、Enterpriseの料金を席数に対する料金とAPI単価による利用料の組み合わせとして説明しています。実際に申し込む方式と、既存契約がある場合はその更新条件を確認しましょう。1
所内で見積もりを比べるときは、利用人数、席の種類、契約期間、追加利用料、上限設定、税を分けて記録する方法を勧めます。単価に人数を掛けた額だけで予算を確定せず、予定する業務量でどこまでが含まれるか、超過時に止められるかを確認します。
商用データは学習利用と保存を分けて確認する
Anthropicは、Claude for WorkとAPIの入出力を、明示的なプログラム参加やフィードバック等の場合を除き、既定で生成モデルの学習に使用しないと説明しています 2。
一方、保存期間は別です。公式説明では、Claude for Workで保存したチャットとAPIのデータで扱いが異なり、契約、安全対策、法的義務などによる例外もあります 3。Enterpriseにはカスタム保持設定がありますが、設定対象外のデータや例外がなくなるという意味ではありません 4。
カスタム保持の公式説明では、プロジェクト内のチャットにはプロジェクト側の保持期間が優先されます。プロジェクトは既定で無期限に保持されるため、チャット側の期間だけを設定しても、プロジェクト内のチャットを同じ期限で削除する設定にはなりません。対象とする保存先を分けて確認してください。4
さらに、2026年6月9日以降、一部のCovered Modelsでは特定の条件下で30日間の保持が必要になると案内されています 5。したがって、「Enterpriseだから保存されない」「ZDRだからすべて即時削除」と一括して判断せず、利用するモデル、機能、API設定、契約条件を個別に確認します。
SSO、JIT、SCIMは同じ機能ではない
ClaudeのSSOはTeam、Enterprise、Consoleで案内されています 6。しかし、SSOは本人確認の入口であり、入社・異動・退職に伴うアカウントの作成・更新・削除をすべて自動化する機能ではありません。
SCIMはEnterprise組織向けです。Teamで利用できる招待やJITプロビジョニングと、ディレクトリ連携によるSCIMを混同しないよう、公式の制約を確認します 7。
契約前に、実際の手順で次を確認します。
- 未登録の所員がSSOで初回ログインしたときに何が作成されるか
- IdP側で無効化したとき、Claude側のセッションや所属がどうなるか
- 退職者が参加していた共有領域を誰が棚卸しするか
- ゲスト、外部共有、個人アカウントをどう扱うか
- 緊急停止と通常の退職処理を分けるか
監査ログは「あるか」ではなく「何が残るか」を見る
監査ログはEnterprise向け機能として案内されていますが、すべての会話本文や外部システム上の操作が無条件に記録されるわけではありません。記録対象、取得方法、保持、権限には範囲があります 8。
必要な証跡を先に定義します。
- メンバーの追加・削除
- 権限・ロールの変更
- SSOやSCIMの設定変更
- 共有領域への参加・離脱
- 調査時に必要な時刻、操作者、対象
そのうえで、管理画面、監査ログ、Compliance API、IdP、端末側ログのどこに何が残るかを照合します。「監査ログ対応」という一語だけでは、事故調査に必要な証跡がそろうとは限りません。
長文を渡せることと、渡してよいことは別
長い契約書、議事録、証憑一式を一度に扱える機能は便利ですが、入力できる量が大きいほど、関係のない個人情報や守秘情報まで含める可能性も高まります。
ファイルを投入する前に、次の処理を標準化します。
- 利用目的に不要なページ・列・添付を除く
- 氏名、住所、口座、識別番号などを必要に応じて置換する
- OCR後のテキストに、見えない情報や別案件の内容が混ざっていないか確認する
- 出力を原文と照合し、根拠箇所を示せない結論は採用しない
- ファイルと会話の削除・保存手順を記録する
共有プロジェクトや知識機能を使う場合は、案件単位の参加者、共有範囲、終了時の削除責任も決めます。
コード機能は情報入力だけでなく実行権限を確認する
コード生成やリポジトリ連携を使う場合、検討対象はプロンプトだけではありません。ソースコード、設定ファイル、端末上のファイル、環境変数、外部サービスへの接続権限が作業範囲に入る可能性があります。
少なくとも次を確認します。
- 接続を許可するリポジトリとディレクトリ
- 本番環境や顧客環境へ到達できないこと
- 秘密情報を読み取れない、または必要最小限に限定できること
- 外部通信先と送信内容
- コマンド実行やファイル変更に人の確認を挟む範囲
- 生成物を本番へ反映する前のレビューとテスト
「商用プランだから安全」ではなく、サービスに渡す情報と、サービスへ与える権限を別々に制御します。
BAAや認証を用途適合の証明にしない
Anthropicは対象となる商用顧客向けにBAAの手続きを案内していますが、所定の有効化が必要で、すべての機能やデータフローが自動的に対象になるわけではありません 9。BAA、SOC報告書、ISO認証などが存在しても、自所の具体的な利用方法が法令・職業倫理・顧客との契約に適合することを自動的に証明するものではありません。
個人情報保護委員会は、本人の同意を得ずに入力した個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合、法違反となる可能性を指摘しています。そのような入力を行う場合は、提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう注意喚起しています 10。入力の可否は、利用目的、情報の種類、契約、委託・第三者提供の整理、各士業の守秘義務を踏まえて判断します。
試用結果を残す判定表
次は、実際の顧問先情報を含まないテスト用資料・アカウントで確認するための記録案です。自所で試験できない項目は、提供者へ確認する事項として残します。実測した導入効果や、法令への適合を保証する表ではありません。
| 試すこと | 残す記録 | 契約判断を保留する例 |
|---|---|---|
| 所員の参加と退職時の停止 | 実行した操作、実行者、操作時刻、停止後のログイン結果 | 誰がどこで利用を止めるか決まっていない |
| 案件資料の共有 | テスト資料の保存先、参加者、権限を持たないテストアカウントでの閲覧結果 | 別案件の担当者に資料が見える |
| 証跡の確認 | 必要な操作と、実際に取得できたログの対応 | 必要な操作者・時刻・対象を追えない |
| 保存と削除 | 対象データ、設定、削除操作、公式条件と契約上の例外 | 画面から消えたことだけで、サービス側の削除まで完了と判断している |
| 利用料の管理 | 試用で使った機能、利用量、追加費用と上限の扱い | 想定を超えた利用を誰が把握するか決まっていない |
結果は「要件を満たす」「満たさない」「確認待ち」に分け、確認者と根拠の所在を付けます。機能を使えることに加え、事務所の担当者が日常の参加・停止・調査を実行できるかまで確かめてから判断する手順を提案します。
契約前の最小チェックリスト
- 利用するClaude製品、モデル、機能、APIを特定した
- 学習利用と保存期間を別々に確認した
- Covered Modelsの保持条件が自所の利用に影響するか確認した
- SSO、JIT、SCIMの役割を区別した
- 退職・異動時の実操作をテストした
- 必要な監査記録がどこに残るか確認した
- 共有プロジェクトとファイルの終了手順を決めた
- コード機能へ渡すファイルと権限を制限した
- BAAや第三者認証の対象範囲を確認した
- 規約・DPA・サブプロセッサ・保持条件の再確認日を決めた
Team、Enterprise、APIのどれを選ぶかは、このチェックの後に決められます。人数や評判ではなく、自所の情報・権限・記録・契約要件を満たすかで判断してください。
入力情報を決めるときは顧問先情報をAIに入力する前の確認手順、削除対象を整理するときはAIチャット履歴の保存と削除も参照してください。
関連記事:
参考
Footnotes
-
Anthropic, Pricing。TeamとEnterpriseの機能比較、契約方式、Enterpriseの料金構成を2026年9月30日に確認。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Anthropic Privacy Center, Is my data used for model training?。 ↩
-
Anthropic Privacy Center, How long do you store my organization’s data?。 ↩
-
Anthropic Privacy Center, Configure custom data retention controls for Enterprise plans。 ↩ ↩2
-
Anthropic Privacy Center, Data retention practices for Covered Models。 ↩
-
Anthropic Help Center, Set up Single Sign-On (SSO)。 ↩
-
Anthropic Help Center, Important considerations before enabling SSO and JIT/SCIM provisioning。 ↩
-
Anthropic Help Center, Access audit logs。 ↩
-
Anthropic Privacy Center, Business Associate Agreements (BAA) for commercial customers。 ↩
-
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)。 ↩